遠隔監視の手法

基本(IoT導入編)

前回の記事では、「遠隔監視」をテーマとして具体例などを記載しました。ここでは実際に遠隔監視を実現する手法について記載します。

目次

遠隔監視の手法

ここでは遠隔監視の手法について、それぞれの課題と共に説明します。遠隔監視を構築する上で最初に考えるべき要素として、以下2つが挙げられます。

  1. サーバ(オンプレ orクラウド)
  2. ネットワーク接続(社内LAN or 携帯回線)

これらの組合せをマトリックスにすると以下のようになります。

スライド1

※携帯回線を使っているにも関わらず、社内のオンプレサーバーに接続する、というのはあまり意味が無いので、ここでは除外しています。

それぞれの組合せについて、順番に見ていきたいと思います。

手法①:オンプレサーバ×社内LAN接続

オンプレサーバーとは、サーバーを自社内に構築して運用する形態を指します。元々クラウドのような仕組みが登場するまでは、多くの企業においてオンプレサーバーが主流でした。

製造業におけるオンプレサーバーのシステムは、FAメーカーも比較的ラインナップが豊富です。例えばFAメーカー大手の三菱電機ですと以下のようなものがあります。https://www.mitsubishielectric.co.jp/fa/products/hmi/scada/items/genesis64/index.html

但し、オンプレサーバーはサーバーなど、機器を全て自社で用意する必要があります。また、仕様や機能に対してカスタマイズすると導入コストが非常に高くなり、また導入までの期間も長くなってしまいます。

また、オンプレサーバーは基本的に社内ネットワークで接続する構成が中心になっています。社内ネットワーク内で運用する分には非常にセキュリティが高い、といった利点があります。

オンプレサーバーをベースとして社外から遠隔監視する場合は、社内のサーバにPLCなどの各種機器を接続し、そこにインターネット回線などを介して外部から接続する手法があります。

スライド2

但し、この場合には以下のような課題が生じることが多いです。

・セキュリティの観点から社内ネットワークに社外からアクセスするのが難しい

・工場内など、現場のネットワーク(FA)と事務所のネットワーク(OA)の間を接続するのもハードルが高い

・装置/設備を納品した後、お客様のネットワークに装置/設備を接続するのが難しい

こういった、主にセキュリティ面の課題のハードルが高いことから、遠隔監視といった観点からは実現難易度が高い、というのが実態です。

手法②:クラウドサーバ×社内LAN接続

オンプレサーバー以外の手法として、クラウドにサーバーを構築し、そこに外部から接続する方法があります。クラウドは有名なところではAmazonのAWSや、MicrosoftのAzureなどです。いずれも便利なサービスが山のように存在しており、様々なサービスを組み合わせることでセキュリティ性の高い遠隔監視システムを実現することが出来ます。オンプレサーバーに比べると自社にサーバーを導入する必要が無い分、導入・運用コストの面でメリットが大きいです。また、将来的にクラウド連携などで他のサービスと接続したりすることもできるので、展開性も優れています。

また、接続に関しては社内ネットワーク接続/携帯回線接続の両方で構築することが可能です。前者の場合、市販のゲートウェイを購入し、有線または無線LAN設定を行い社外ネットワークと接続することで、クラウドサーバーに接続することが出来ます。スライド3

最近ではクラウドだけでなくゲートウェイの種類も豊富で、以前に比べるとかなり手軽な手法になってきています。

一方で、社内ネットワークを使ってクラウドに接続する場合は、社内のセキュリティポリシーに引っかかるケースがあるため、専門知識が必要になったり、また専門の部署に依頼する必要があります。

手法③:クラウドサーバ×携帯回線

そこで最後に登場するのが、携帯回線を使ってクラウドサーバーにアクセスする手法です。同様に市販のゲートウェイを使用し、携帯のSIMなどを使用して社外ネットワークに接続します。

スライド4

この手法であれば、社内ネットワークを通さずにクラウドに接続できますので、セキュリティ面に対するハードルが下がります。但し、携帯電話の契約や通信量のランニングコストなどが必要になります。

まとめ

それぞれの手法の特徴を整理すると、以下のようになります。

スライド5

それぞれメリット・デメリットはありますが、遠隔監視の手法において導入のし易さに加え、将来の拡張性なども考えると、「クラウドサーバー×携帯回線」を選択するメリットは大きいと考えます。

但し、実際には製造現場でこの構成が普及しているとは決して言えない状況です。

では、なぜ普及していないのか。

それは次回の「製造業のIoTがなぜ難しいか」の章でお話します。

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